マンハッタンでの駐車

吉田 房子


975年に私はマンハッタンでミュージカルをやる事になって、うちの同居人kさんとマンハッタンに引っ越してきた。ミュージカルが11時ごろに終わって、それからホワイトプレーンズに帰るのは不可能だからである。その時は吉田もロサンゼルスのほうに仕事があって、とうぶん帰ってこれない状態であるし、リハーサルやその他でマンハッタンにいないと仕事にならない状態であった。
マンハッタンに引っ越してきた時に車をもっていて、今までどこかに出かける時はいつも車だったので、マンハッタンに移ったからといって、車を手放す気にはなれない。
マンハッタンで車を持つ事がどんなに大変な事かも知らず、しばらく車に乗ってブロードウエイにいったり、ブルックリンの友人の家に出かけたりしていた。
先ずは駐車場である。駐車場のついたマンハッタンのアパート等というものは、めったにないし、あった所で値段の上で不可能である。それで近所の安いパーキング場を借りて車を置くしか方法がないのであるが、安いといってもアパート代の半分はする。
なんのことはない、1.5倍の家賃を払って、いるようなものである。
あるとき、私の住んでいる前のビルデイングが学校なので、夏休みはそのとうりに駐車出来るという事を聞いた。私は駐車料金を節約しようと考えてさっそく2カ月ぶんの駐車場を解約した。それが節約になるどころか、高いものにつく結果になったのである。

まず、マンハッタンを運転している時に、他の運転者が私に対して、クラクションをならすのである。
最初のうちは無視していたのであるが、何人もクラクションをならすし、あるドライバーは私の車の前部を指して何かいっている、そこで私も車を止めて良くみると、何と駐車違反のチケットをつけたまま、走っていたのである。それにしてもアメリカ人というのは親切でもあるが、何と目敏いのであろうと私はびっくりしてしまった。
後で考えると彼等の方があたりまえで、私の方がにぶいというか、無頓着で彼等の方がびっくりして、あのまま走っていけばチケットを失ってしまうと気が気でなかったのかもしれない。それからは連続して週に2枚ぐらいのチケットを貰い、1カ月に8まいの駐車違反チケットを貰う始末である。
それをどうすればいいのかもしらないし、吉田はいないし、ついに私は知り合いの弁護士に昼食をごちそうする事にして、その8枚のチケットをもっていった。彼はみるなり「オーノー房子、あんたは顧問弁護士がいるよ」という。私は
「そう、だから今日これを持ってきたんじゃない」と応酬すると、彼は
「ユアースマート」と笑いながら、そのチケットを受け取って始末をしてくれた。
チケットを貰った原因は後でわかったところによると、火曜の朝と金曜の朝は掃除車がくるのでその場所から車を動かしていなければならないのだが、それを知らなかったし、また、知っていたところで、あさ早く起きて車を動かすほどまめではない。
どっちみち時間に遅れたりしてチケットを貰うはめになった事だろう。

その後、そのチケットにこりて元の駐車場に入れる事にし、車を持っていくと、そこの親父が出てきて、いったん解約したのだから、元の値段ではあずからないといいだした。それも前の1.5倍であずかるという。
もともと私はその親父が信用できない感じで嫌いだったので、他の駐車場に持っていき、結局は前よりも高い料金を払わせられるはめになった。マンハッタンという所は何という所だと腹がたってならない。
さらにブロードウエイのシアターにいくのに車でいき、ウインターガーデンの近くのパーキング場に車をおいたのであるが、ある日、私が車を入れて、まさにウインターガーデンの裏口に入ろうとすると、アメリカ人に声をかけられた。
みると駐車場のお兄さんである。彼いわく、私が車の鍵を私の車の中に入れたままドアを閉めたので車が他の車の邪魔になって営業妨害であるという。
しかたがないので駐車場に戻ると、皆で私の車を取り囲んでわいわい、いいあっている。
私は開演時間に遅れそうだし、どうすればいいのかと聞くと、どうしようもないという。そんなわけがない、駐車場始まって以来、そんな事が起こったためしがないとはいわせない。そうするうちに、鍵やを呼ぶしかないとないという、それには2.3百ドルかかるけれども、それでいいのか等とおどかす。私は本当に腹がたって、
「それしか方法がないのなら、それをやったらどうだ!」と怒鳴り返した。
私がウインターガーデンで仕事をしている事はわかっているし、(裏口までついてきたのだから)時間がない事も解っている。それにつけこんでいるいる事はあきらかである。私は
「鍵やを呼びなさい、この車を引き取りに来たときに、その領収書を渡してくれれば払いましょ」といってやった。
ところが彼等はもじもじして、我々の中にスペシャリストがいるから、200ドル払ってくれれば、窓を開けられるという。私は 「100ドルしか払わない、それが嫌なら、鍵やを呼べ、100ドルなら今払ってやる」と腹がたっているから、英語もブロークンだろうと何だろうとかまうものかと、すらすら出てくる。彼等はそれで納得して、私は100ドル払うなり、ウインターガーデンに駆けこんだ。そしてまもなく私はその車を処分した。


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